日本の臨床工学の未来を拓く。日米の架け橋として次世代の挑戦を応援します

日本と米国における臨床工学とHTM(医療技術管理)の対比

https://aami.org/news/contrasting-clinical-engineering-and-japan-us

これは上記、AAMIニュースURLを日本語訳したものです。

公開日:2026年6月1日 | 執筆:Dan Visnovsky

「AAMI eXchange 2026」において、参加者はAAMI史上初となる試みに立ち会うことができました。それは、日本と米国の医療技術管理(HTM)の専門家が一堂に会し、それぞれの国における独自の発展を比較・対比するというセッションです。

日本代表としては、日本赤十字社仙台病院に勤務し、先日「BMET of the Year」を受賞されたばかりの吉岡淳博士(Jun Yoshioka, PhD)、そして米国代表としてはバイオメディカルエンジニア兼コンサルタントのPriyanka Shah氏が登壇し、それぞれの国を代表して意見を交わしました。

吉岡氏は、両国における臨床工学技士の共通の使命について次のように言及しました。

「在宅医療へのアプローチは国によって異なりますが、私たちの使命は同じです。それは、在宅の患者さんに対して、安全で信頼性の高い医療機器を確実に提供することです」


目次

🇯🇵 日本における臨床工学

日本は、臨床工学に対して独自のアプローチをとらざるを得ない特有の課題に直面しています。高齢化社会の進展と、在宅における生命維持管理装置の使用増加により、病院以外の環境(非臨床設定)での明確な責任の所在が必要となりました。

日本では、臨床工学技士が「病院と家庭をつなぐ架け橋」として機能し、予防保守やリスクマネジメントに従事するだけでなく、極めて重要な役割として、患者やそのケアチームへの教育を行っています。これにより、生命維持管理装置の操作や、血液透析、人工呼吸器、ECMO(体外式膜型人工肺)などの処置を含め、病院から在宅へとシームレスな医療が提供されています。

「日本は、臨床工学技士(Clinical Engineers)に特化した国家資格を持つ世界で唯一の国です」

日本の国家資格制度は1988年に設立され、今日では26,000人以上の免許保有者が存在します。吉岡氏によると、全体の60%が20代〜30代の若手層であり、26%を女性が占めています。さらに2022年には、オンライン診療(遠隔医療)の診療報酬改定という規制上のマイルストーンを達成しました。吉岡氏は、これが「臨床工学技士が主導する、持続可能な遠隔モニタリング運用の基盤」を作ったと強調しました。

在宅デバイス管理の範囲

日本の臨床工学技士における在宅機器管理の範囲は多岐にわたります:

  • 機器のセットアップと品質保証(QA)
  • 患者への教育
  • 24時間365日の緊急対応
  • 遠隔モニタリング

「私たちは、病院レベルの機器安全性と、生活環境全体の柔軟性を融合させています」

日本の臨床工学技士は、主に「在宅人工透析」「在宅人工呼吸器」「遠隔モニタリング」「補助人工心臓(VAD)」の4つの主要カテゴリーにおいて重責を担っています。

在宅人工呼吸療法(HMV)、補助人工心臓(VAD)、植込み型心臓デバイスなどの特定の機器や処置において、医師が機器の設定(コンフィギュレーション)を担当する一方、臨床工学技士は予防保守、家庭訪問、そして患者や家族への教育を行います。

吉岡氏はまた、緊急時における「24時間年中無休のホットライン」の重要性も訴えました。

「この一分一秒を争う高リスクな環境において、冗長性計画(バックアップ体制)と緊急対応に関する臨床工学(CE)の専門知識こそが、患者の生存を守る第一の砦となります」

日本の臨床工学を支える5つの柱

吉岡氏によれば、日本の臨床工学は以下の5つの柱に基づいています。

  1. 患者ケアにおける工学的専門知識のユニークな統合。
  2. 高リスクな在宅機器には、病院の枠を超えた工学主導の安全戦略が必要であること。
  3. 強力な法的枠組みと国家資格による一貫性の確保。
  4. 遠隔モニタリングと遠隔医療が、今後の未来で極めて大きな役割を果たす可能性。
  5. 在宅医療における世界的な課題に対し、日本から得た教訓を応用していくこと。

🇺🇸 米国における臨床工学(HTM)

続いて、Priyanka Shah氏がアメリカの文脈における臨床工学について解説しました。

米国の在宅ヘルスケア市場は非常に巨大であり、2030年までに2,390億ドルに達すると予測されています。この変化は、急性期を脱したケア設定にいる患者数の増加、外来型在宅医療の導入、そして複雑化する新しい医療機器の普及によって加速しています。しかし現在、そのケアの責任は「患者自身」やその家族に委ねられるケースがますます増えているのが現状です。

「在宅ヘルスケアの普及は定着しつつありますが、その導入や実施の手法にはまだ変化の余地があります」

Shah氏によると、新しいケアモデルは、オンデマンドの先回りした管理、慢性期疾患の管理、亜急性期ケア(ポスト・アキュート・ケア)、急性期ケア、そして終末期ケア(エンド・オブ・ライフ・ケア)に重点を置いており、それによって「病院レベルの治療を自宅で提供する」ことを目指しています。

米国での役割模索とこれからの領域

しかしShah氏は、臨床工学技士が果たすべき役割について「多くの混乱が存在してきた」とも指摘します。機器やテクノロジーの情勢が拡大し続ける中で、予測不可能な「在宅環境」においては、「一律で当てはまる解決策(One-size-fits-all)」は存在しないからです。

今後、臨床工学技士が介入すべき、あるいは将来的に貢献できる領域として、以下の5つが挙げられました。

  • 機器管理: 点検、予防保守、およびキャリブレーション(校正)。
  • 在宅安全評価: 電気的な安全性や転倒リスクの評価。
  • 患者および介護者への教育: アラーム対応、機器の操作、トラブルシューティング、および緊急時の対応。
  • 規制およびリコールへの準拠: FDA(米国食品医薬品局)のリコールやエラー報告に関連する問題の対応。
  • テクノロジーの統合: 遠隔医療ケアやネットワーク接続された機器の統合。

米国HTMへの提言

Shah氏は、最後に聴衆へ向けていくつかの重要な教訓を投げかけました。

  1. 新しい環境(在宅)に合わせてマインドセットを適応させること。
  2. 患者とその介護者を徹底してトレーニング(教育)すること。
  3. マルチステークホルダー(多職種・多機関)の協働が鍵であることを理解すること。
  4. 規制の動向や診療報酬(リインバースメント)の変化に常に注意を払うこと。
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この記事を書いた人

Tomo(長澤 智一)
臨床工学技士 / 米国認定心血管インターベンション専門士(RCIS)

日本では体外循環(Perfusionist)を行なっておりました。米国ではカテーテル室(Cath & EP Lab)の第一線で活動する臨床工学技士。日本での臨床経験を経て渡米し、全米トップ5%にランクされる医療施設にてRCISとして従事。

自身の経験から、日本の臨床工学技士が持つ技術力の高さを確信し、その可能性をグローバルに広げるための情報発信を行う。「現場のリアルを、次世代のスタンダードに」をモットーに、医療現場レベルの正確性と誠実さを追求したキャリア支援を提案している。

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