日本の臨床工学の未来を拓く。日米の架け橋として次世代の挑戦を応援します

AAMI eXchange 2026 三日目 ― デンバーで過ごした、5月30日

いよいよ、朝からセッションが組まれた、AAMI eXchange 2026 の土曜日がスタートしました。朝から夜まで動きどおしで過ごしました。何を見て、何を思ったのか、読んでいただけるとありがたいです。

目次

朝一番、ACCE 米国臨床工学シンポジウムへ

最初の行動は、朝7:15 からのサイバーセキュリティのセッションからスタートです。肥田さんがサイバーセキュリティを聞きたいということで、このセッションへお誘いしましたが、アメリカの病院の朝は早いので、みんな慣れているのですが、日本から来て時差ぼけがあることに加え、日本の方は、こんな朝から働かない事、そして前日の大興奮の野球観戦を考えると、この時間からは厳しかったか、と思いつつも肥田さんのLINEに連絡を入れました。朝7:30からは、ACCE (米国臨床工学技士会)米国臨床工学シンポジウムでした。テーマは「次世代をどう育てるか」。人材不足を「氷山の一角にすぎない」と語った言葉が、妙に耳に残ります、深刻な状態です。

主催するACCEは、私たちJACE (日本臨床工学技士会)と提携している大切な団体です。だからこそ、肥田さん、吉岡さん、私の三人で顔を出し、日本の存在感を示したいと考えていました。けれど肥田さんは連絡待ち、吉岡さんは、明日のセッションに向けて体調を整え発表の練習です。そして肥田さんは、受付がまだ済んでいません。その後、私の携帯に電話が入り、私はこのシンポジウムを途中で抜けることになりました。存在感を示すどころか、席を立つ側に回ってしまった。もう少し聞いていたかったという心残りが、正直なところ残っています。

アワード表彰のリハーサルの為に吉岡さんと合流し、リハーサルまで少々時間があることを確認し、私は吉岡さんと AAMI キャリアフェアー の部屋に行きました。ここでは、SNS等で使えるビジネス用の上半身写真を撮ってくれます。アメリカの履歴書には写真を貼る欄がありません。それは、人種、肌の色、宗教、性別、年齢、出身国、障害などに基づく雇用差別を厳しく禁じる法律があるからなのです。ですので、年齢を書く欄もありません。国が違えば、法律が違って面白いですよね。さて、上半身のビジネス写真を撮る吉岡さんですが、日本でよくある顎を引いて真面目な顔、ってことはなく、「笑って〜」と言われます。しかし、そんな「笑って」に慣れていないのが日本人です。吉岡さんも例に漏れず「笑って」と言われると、引き攣った様な表情になってしまいます。何度も写真を撮り直すカメラマンに、「なぜ笑えないのだ〜」と怒られる始末、そんな状況なので私はそっとカメラマンの後ろに立ち、吉岡さんを笑わせていました。

カメラマンに「しょうがないこれで行こう!」と言われた、最善のスマイルをもう一度デンバーの会議場の名物、ガラスを覗き込む巨大な青いクマの前で披露してくれる吉岡さんです。何事にも熱心に取り組みます。

そして、青いクマの前で待っていた肥田さんと合流し、吉岡さん同様に写真をパシャリ!

受付を終わらせ、大正医科の筧さんと社長さんも加わり、私たちは表彰式のリハーサルへ向かいました。

表彰式のリハーサル、その裏側を覗いて

会場では、表彰式のリハーサルが行われていました。決められた位置で止まり、賞を受け取り、握手をして、写真を撮る。本番さながらの段取りを、CEOをはじめ登壇予定の人たちが、何度も丁寧に練習しています。表彰の機会がなければ目にすることのない、舞台裏の努力がそこにありました。すごいな、と素直に思いました。日本も見習うべきところです。

ここは単なる業界の集まりではなく、世界の標準を決めている場所なのだと、眺めながらみんなで確かめ合いました。前夜のオープニングをご存じない肥田さんには、出展企業と参加者が言葉を交わせる場が仕組みとして用意されていることを説明しました。その細やかさが、場の温度を上げているのだと思います。

アワード表彰式 ― 吉岡さんの受賞

動画は自動再生(ミュート)されています。
ぜひ音声をオンにして、当時の臨場感あふれる拍手や熱気を感じてください!

オープニングのセッションが始まり、表彰式で、この日いちばん心を揺さぶられる瞬間を迎えました。GEヘルスケアが後援する「最優秀生体医工学技術者(BMET of the Year)」を、日本臨床工学技士会の国際交流委員長、吉岡淳さんが受賞されたのです。仙台の日本赤十字病院のクリニカルエンジニアで、世界で初めての発明をいくつも手がけてこられた方です。当時副理事長の肥田さんも、この場を見届けました。

自分が推薦した人が、晴れの舞台で表彰される姿を見ていると、涙が出てきました。ビデオを回していたので、手が震えないように、声が漏れないように、それだけを必死にこらえていました。

基調講演

基調講演「未踏の道を切り拓く(Forging a Path Not Yet Traveled)」については、別の記事に譲ります。

基調講演は、AAMI eXchange 2026 基調講演 「未踏の道を切り拓く (Forging a Path Not Yet Traveled)」

https://tomousa.com/aami-exchange-2026-5-30-keynote/

昼下がり、ランチの席を探して

昼、ランチを受け取りに向かう途中で、あるボランティア団体の活動が耳に入ってきました。医療機器をコンテナにまとめ、必要とする人へ無料で届ける。運営はすべてボランティアだそうです。このときの私は、この話が翌日の基調講演につながっているとは、露ほども知りませんでした。ただありがとうと礼を言い、ランチへ向かったのです。

席を探して展示ホールを歩き、結局は会場の中に落ち着きました。食事の合間、吉岡さんは、講演中にChatGPTで登壇者を調べてみた話をしてくれました。AIの発展はすごいものですね。ランチボックスには、もぎたてのリンゴが丸ごと一個。カットもされず、丸ごと一個です。齧れということなのです、日本からの参加者さん達は、一瞬たじろいでいました。みんなでかぶりつく姿もまた、文化の違いを味わうよい時間でした。

展示ホールを歩く ― サイバーセキュリティの会社を訪ねて

この日いちばん長く時間を費やしたのが、展示ホールを歩き回ることでした。目当ては、サイバーセキュリティに関わる企業のブースです。会場のアプリの地図を頼りに、Sodexo、MedCrypt、MediGate と、一つずつ訪ねていきました。

そして最後に行き着いたのが ARMIS でした。ここでも肥田さんが通訳をつけ、熱心に話し込んでいます。「ここのシステムがあれば、思っていることが全部できるな!」。独り言とも取れるその言葉が聞こえてきたとき、私は内心、来た甲斐があった、とほっとしたものです。もっとも、肥田さんが真剣に商談を進めている裏で、私は元K1の選手と写真を撮ってもらっていました。

夜は Lucky Strike へ ― そして思いがけない誘い

夕方六時から、AAMIのパーティーが始まります。今年の会場は Lucky Strike デンバー。ボウリングにゲームセンター、食事とお酒までが一か所で楽しめる施設でした。席を探すと、見つかったのはボウリング場のラウンジ。棚には専用の靴が並ぶのに、係の人がいません。通りかかった店員さんに尋ねると、「私には見えていませんから、どうぞお好きに」と言うではありませんか。これもさすがアメリカだなと、笑ってしまいました。吉岡さんのもとへは「おめでとう」と声をかけに来る人が次々と現れ、私は少し離れて、温かい気持ちで見守っていました。

外に出たところで、世界の臨床工学をつなぐ団体のトムとヤディンに、ばったり出会いました。そこで始まったのが、ICEHTMC学会(国際的な医療技術の学会)を日本で開催しないか、という誘いです。肥田さんを交えて話すうちに、思いがけず具体的になっていきます。来年の五月、いまから一年あれば受け入れの準備は整う。通常は11月に開く学会をずらしても構わない。そう言って、肥田副理事長に打診していました。通訳ありで話し込んだ後に、「わかった、じゃ、来年の五月に東京で!」と、トムとヤディンに握手する肥田副理事長、私は、え?そんな約束して大丈夫かな?と思いましたが、この先どうなるのか、楽しみでなりません。

そのあとは近くの店での遅い夕食となり、気づけば眠る頃合いです。明日は、いよいよ私たちのセッションの番。体調を整えようと言い交わして、それぞれの部屋へ戻っていきました。

おわりに

振り返ると、この一日は、見せ方や仕組みに感心しどおしの一日でした。リハーサルの裏にあった努力、人と人がつながるよう設えられた場、ボウリング場での靴を「見えていない」と笑って受け流す軽やかさ。どれも、日本にいるだけでは出会えなかった景色です。

何より忘れられないのは、自分が推薦した人が世界の舞台で表彰される姿を、震えをこらえて見届けたことでした。よい一日だったと胸を張れます。明日は、私たちが話す番です。今日もらったものを、今度は自分たちの言葉で返していく。静かにそう思いながら、デンバーの夜は更けていきました。

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この記事を書いた人

Tomo(長澤 智一)
臨床工学技士 / 米国認定心血管インターベンション専門士(RCIS)

日本では体外循環(Perfusionist)を行なっておりました。米国ではカテーテル室(Cath & EP Lab)の第一線で活動する臨床工学技士。日本での臨床経験を経て渡米し、全米トップ5%にランクされる医療施設にてRCISとして従事。

自身の経験から、日本の臨床工学技士が持つ技術力の高さを確信し、その可能性をグローバルに広げるための情報発信を行う。「現場のリアルを、次世代のスタンダードに」をモットーに、医療現場レベルの正確性と誠実さを追求したキャリア支援を提案している。

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